相手をたしなめるように、
「これ、|牛《うし》|丸《まる》、どうしたものじゃ。お客さまがびっくりしていらっしゃるじゃないか。文彥くん、かんにんしてやってください。こいつは口がきけなくてな。もっともふだんは|読唇術《どくしんじゅつ》で、話もできるのだが、きょうはよっぽどあわてているらしい。牛丸、おちつきなさい」
老紳士にたしなめられて、牛丸青年もいくらかおちつき、手まねをまじえて、なにやら話をしていたが、それを聞くと老紳士の顔が、とつぜん、キッとかわった。
「な、な、なんだって? それじゃまたダイヤのキングが……」
「おう、おう、おう……」
「よし、案內しろ」
老人はよろめく足をふみしめながら、牛丸青年のあとからついていく。文彥はちょっとためらっていたが、思いきってあとからついていった。
洋館のうしろはしばふの庭になっていて、そのしばふの中央に太いスギの古木がそびえている。そのスギの木のそばに、香代子がまっさおになって立っていた。
牛丸青年にみちびかれるままに、老人はよろよろと、スギの木のそばへ近づいていったが一目その幹を見ると、アッと叫んで立ちすくんでしまった。
スギの幹のちょうど目の高さあたりに、みょうなものが五寸くぎで、グサリと突きさしてあるのである。それはトランプのダイヤのキングだった。
黃金の小箱
「アッ、こ、これはいけない!」
ヘビにみこまれたカエルのように、しばらく、身動きもせずに、あのあやしいダイヤのキングを見つめていた老紳士は、とつぜん、そう叫んでとびあがった。そして、そのひょうしに文彥のすがたを見つけると、
「アッ、文彥くん、きみもここへきていたのか。いけない、いけない。きみはこんなところへきちゃいけないのだ!」
そう叫んで文彥の手をとると、
「さあ、いこう、むこうへいこう、香代子。牛丸。おまえたちも気をつけて……」
文彥の手をとった老紳士は、逃げるように勝手口からなかへはい�