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第12部分

「だれか!」

等々力警部が聲をかけると、

「アッ、警部さん、きてください。くせものをつかまえたんですが、こいつ少しみょうなんです。からだがゴムのようにやわらかで……」

その聲はまぎれもなく金田一耕助。それを聞くと等々力警部と文彥は、大急ぎでそばへかけつけると、サッと懐中電燈の光をあびせたが、そのとたん、

「アッ、き、き、きみは香代子さん!」

おどろいてとびのいたのは金田一耕助である。

なるほど金田一耕助に組みしかれて、ぐったりと倒れているのは、大野老人のひとり娘、香代子だったではないか。

「きみだったのか。きみだと知っていたら、こんな手あらなまねをするんじゃなかったんだ」

金田一耕助に助けられて、よろよろと起きなおる香代子を、等々力警部はうたがわしそうな目で見つめながら、

「お嬢さん、あんたはなんだっていまじぶん、こんなところへきたんです。まさか銀仮面の仲間じゃあるまいと思うが、こんどというこんどこそ、すべての秘密をあかしてもらわんと、このままじゃすみませんぞ」

等々力警部に鋭くきめつけられて、

「すみません、……すみません」

と、香代子はただむせび泣くばかり。

金田一耕助はやさしくその肩に手をかけて、

「香代子さん、こうなったらなにもかもいってしまいなさい。きみがいくらかくしても、ぼくはちゃんと知っています。あなたがたの秘密というのは、人造ダイヤのことでしょう」

それを聞いて香代子はもちろんのこと、等々力警部も文彥も、思わずアッと、金田一耕助の顔を見なおした。

人造ダイヤ

人造ダイヤ! おお、人造ダイヤモンド! それはなんという大きな秘密だったことだろう。

きみたちもご存じのように、化學的にいえば、ダイヤモンドは純粋の炭素からできている。木炭や、きみたちが學校でつかう鉛筆のしんなどと、ほとんどおなじ成分なのだ。

だから、ダイヤモンドに高い熱をあたえると、燃えて炭酸ガスになってしまう。むかしある王さまが、世界一の大きなダイヤモンドを作ろうとして、じぶんの持っているダイヤを全部、|爐《ろ》にいれてとかしたところが、あけて見たら、ダイヤは影も形もなかったという、お話まで伝わっているくらいである。

しかし、そうして成分もわかっているのだし、しかもその原料というのが、世にありふれた炭素なのだから、人間の力でダイヤができぬはずはない。――と、いうのがむかしから、科學者たちの夢だった。

しかし、學問的にはできるはずだとわかっていても、じっさいには、いままで大きなダイヤモンドを、作りあげたひとはひとりもいない。ただ、いまから六十年ほどまえに、フランスの科學者が、電気爐のなかで、強い圧力をかけながら、炭素をとかして、ダイヤを作ることに成功したが、それは|顕微鏡《けんびきょう》で見えるか見えないかというほどの大きさだったから、じっさいの役には立たないのだ。

それからのちもこの問睿�蚪鉀Qしようとして、多くの學者が努力した。ダイヤモンドを作ることに成功しなかったとしても、それらのひとびとの努力はけっしてむだではなかった。ダイヤモンドと木炭がおなじ成分からできていながら、ちがっている秘密がだんだんわかってきたからなのだ。だから、そのちがいさえなくすれば、人造ダイヤは作りだすことができるはずなのである。

きみたちはこの物語のはじめのほうで、金田一耕助が成城にある大野老人の地下室で、純粋の炭素を製造する、ふしぎな機械を発見したことを覚えているだろう。あの機械と、大野老人の手元から出た、いくつかの大寶石から、金田一耕助はついにこの秘密を見やぶったのだった。

金田一耕助のことばに、香代子は涙にぬれた目をあげると、

「まあ、先生! 先生どうしてそのことを、知っていらっしゃいますの?」

金田一耕助はにこにこしながら、

「だってきみは、あれだけの大きなダイヤを、まるで炭のかけらぐらいにしか、